幻の「トバ」と熱燗はまた今度

かなり前のことです。デパートの北海道物産展に足を運んできました。

サーモンや、ハム、ソーセージ、チーズ、チョコレート、牛乳、ヨーグルト、ラム肉、カニなどなど、なんでもあるのが、北海道なんですね。会場で、今まで見たことがなかった「トバ」と呼ばれるアイヌの人々が、鮭を乾燥させて燻製にしたという、伝統的な珍味をみつけました。

スモークサーモンとは、異なるまるで鮭のジャーキーのような固い食べ物でした。「トバ」は、古くはアイヌ民族が、和人たちとの交易品としていたようです。西洋風なスモークサーモンとは、似ているのですが、全く異なる食べ物のようにもみえました。

そういえば、友人が、以前、北海道旅行のおみやげとして、鮭の皮の塩っ辛いものを買ってきてくれた事がありましたが、もしかしたら、あのおみやげも「トバ」の一種であったのかもしれません。日本酒とよく合い、とても野性味のある味がしたのを覚えています。

急に、あの時食べた鮭の味を思い出し、「トバ」を買ってみようとレジに並んだとたんに、バッグの中にお財布が入っていない事に気が付きました。大事そうに抱えていたバッグの中には、デパートまでの交通機関に使用するスイカと、ハンカチと、化粧道具と携帯電話だけでした。

デパートに到着するまでは、スイカのカード入れしか、バッグから出し入れしていないので、途中で落したのではなく、自宅から持ち歩いていない事は感覚的にすぐに分かりました。でも、どうして物産展に到着するまでに、財布がバッグに入っていない事を気が付かなかったのかと後悔しましたが、物産展は本日閉店までと言うことなので、その場で泣く泣く「トバ」は諦めました。

自宅に帰ると玄関の床に、財布が置き去りにされていました。北海道物産展に行くために、財布にお金を足し入れようとバッグから財布を取り出して・・・、そこまでは、記憶にあるのですが・・・。

代わりと言ってはなんですが、帰宅後にネットで「トバ」を注文しておきました。そして数日後、無事に「トバ」をあてに美味しい熱燗が飲めたのでした。

           

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